日々の暮らしの中で

二十四節気のひとつである『白露』。今年は 9月 7日だったらしい。子どもの頃に、『朝の光を受けて、白く輝く露』のことを こう呼ぶのだと知った。そして、草の葉の上で朝日に輝く露 を想像して「綺麗な言葉と情景だなぁ」と感じたことを、この時期になると ふっと思い出す。

「『白露』が過ぎれば、今度は ツバメが去るのよ。」とも聞いた。祖母の生家(今はもう面影が無くなってしまったけれど)の軒下には 毎年ツバメが巣を作っていたとのこと。

今年も春先にやって来て夏を過ごしたツバメ達が、子育てを終えて 暖かい南方へと渡って行く日も間近だろう。コロナ禍もなんのその、「県境を越えてはダメ」というルールもなく数千キロにも及ぶ旅。途中で「疲れたから道の駅で一休み。お土産も買いたいね」とか、「たまには贅沢して豪華な温泉付きホテルにしましょう」ということもなく、目的地まで不眠不休・飲まず食わずの過酷な旅。「がんばれ、がんばれ、また来年ね・・・」と、私は会ったこともないツバメ達にエールを送る。

 

ふと、「数千キロ、数万キロの距離を迷わずに渡って行けて、翌年はまた同じ所に帰って来られるのは なぜ?」という疑問が湧いた。すぐに検索。子ども向けのサイトがあった。分かり易くて好きだ。

解説によると、【鳥は、太陽や星座の位置を頼りにしたり、地球の磁気を使っている】とのこと。【体内に方位磁針を持っているので方向がわかる】らしい。【そのようにして、ある程度の所まで行ったら、今度は地形の記憶を頼りに飛び、最後は目で確認して目的地に辿り着いていると考えられる。匂いや仲間の泣き声も頼りにしていることもある】 ←『「ふしぎ」を見に行こう』 (川上和人さん)

ほぉ~、そうなんだぁ。すごいねぇ。 ひたすら感心する。 カーナビが「700メートル先の信号を左折です」と言っているのに、300メートル先の信号を左折して道に迷う私とは大違いだわね。なんという素晴らしい渡り鳥達。

 

大きなスケールで移動する渡り鳥達と違って、私達人間は 思うようには動けない状態が もう 2 年も続いている。外出する際の忘れ物チェックに マスクが当然のように加わった。

はぁ~、ふぅ~。 時々大きく溜息をついてみる。「溜息をつくと幸せが逃げるのよ」と、頑張り屋さんだった祖母は言っていたけれど、おばあちゃん、私はそんなに頑張れないのよ。  ひぃ、ひぃ、ふぅ~(出産か?)

 

こんな日々でも、季節は静かに移ろっている。

数十年前に出合ったレイチェル・カーソンの言葉に、【地球の美しさを神秘と感じとれる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれることはけっしてないでしょう。たとえ生活のなかで苦しみや心配ごとにであったとしても、かならずや、内面的な満足感と、生きていることへの新たなよろこびへ通ずる小道を見つけだすことができると信じます。】とあった。( 著書『センス・オブ・ワンダー』)

当時 深く感銘を受け、「平凡な生活の中にあっても このようにして日々を過ごしていこう」と思った。しかし、時の経過と共に 生活も変化し、心身ともに疲れ果ててしまうような精一杯の日々も増えた。それでも、なにかをきっかけに湧き上がってくるのがレイチェル・カーソンのこの言葉。

遠縁の『 Y おばちゃん』が 何かの折りに 言った言葉を聞いた時もそうだった。彼女の息子(私は『 T お兄ちゃん』と呼んでいる)は難病をもって誕生し、すぐに産婦人科から大きな病院の小児外科へと移り、一度も自宅に帰らないまま、ICU (集中治療室)と一般病室を行き来して歳月が流れたとのこと。

『 Y おばちゃん』は、「この子は生まれてからずっと、窓枠で切り取られた四角い空しか知らずにいる」と切なくなることもあったらしい。ところが ある日、病室の窓を開けると 心地良い風が吹き込んできて『 T お兄ちゃん』の髪を揺らした。すると赤ちゃんだった『 T お兄ちゃん』は嬉しそうにニコニコと笑ったという。その笑顔を見て、「どんな状態にあっても 幸せを感じることができる」と『 Y おばちゃん』は思ったとのこと。

『 Y おばちゃん』と『 T お兄ちゃん』です  

yugure-suifuyou.hatenablog.com

 

それから時は流れ、私もブログや twitter の片隅に参加させてもらうようになると、数え切れないほどの『センス・オブ・ワンダー』に出合うようになった。庭の花々・近所で見つけた草花や風景に足を止め 写真を撮り、 味わい深い言葉を添えてブログに載せられる方達がいらっしゃる。瑞々しい感性に憧れる。 拝見するたびに ほっこりと心が和む。

自然界のみならず、毎日の食卓の写真を載せられる方達もいらっしゃる。添えられたレシピやユーモラスな言葉と共に、作られる方の温かさが伝わってくる。また、家族への思いを率直に綴られる方達もいらっしゃる。うんうんと共感したり、切なくなったり、胸が熱くなったりもする。

自然も人も みんな みんな『センス・オブ・ワンダー』。

コロナ禍も長きに渡り、この先どうなるのだろう・・・という不安もある 現在だけど、どんな状況にあっても、自分の五感を研ぎ澄ませていれば、語りかけてくるものがある。それらをキャッチする感性を錆びさせずに暮らしていこうと思う。

 

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