謎なり

(実家にての話が まだまだ続きます)★リビングの片隅に立て掛けてあった黒いケースを、娘 (小焼け) が見つけた。「これ、なぁに? 開けてもいい?」と言いながら、祖父母の返事も待たずに もう開けている。「ギターにしては大きいし、チェロにしては小さいケースだと思ったけど、これ、サイレント  チェロ?」と早速取り出して眺めている。

「おじいちゃんが 買ったのよ」と (私の) 母が言う。「あらまあ、どうして?」と尋ねると、父が「ネットを見ていてポチった」と答える。(お父さん、あのねぇ、購入手段じゃなくて、理由を聞きたかったのよ) 「ねっ、お父さんたら、相談も無しに 突然こんな行動をすることがあるよね」と母が笑っている

 

父は学生時代にチェロを弾いていた。社会人になっても暫くの間は、(バイオリンを弾く母と一緒に) マチュア オーケストラに所属していたらしい。けれども仕事が忙しくなり、転勤もあったりで 次第に弾くことから遠ざかり、チェロも後輩に譲ってしまったとのこと。

時は流れ・・・退職した現在、「またチェロを弾いてみようかと ふと思った」と父は言う。「感覚を取り戻すにはかなりの練習がいるから、周囲への音を気にせず 何時でも弾きたい時に弾けるのはサイレント チェロだ」と閃いたらしい。(あくまで練習用なので、技術がある程度になったら、音色の良い木製のチェロを購入するとのこと)

 

父はここ数年の間に 記憶力が衰えてきているようだ。判断力も弱くなったのだろうか ( 母が言うには) 運転中に交差点に差し掛かると、こちらは青なのに停車しそうになったこともあったらしい。それで、長距離は母が運転するし、近くに出かける時でも 助手席に必ず母が乗る約束なのだとか。

先日、母がスピード違反で捕まった、いえ、警察官の方からご指導を受けた後に、「これだけの反則金があれば、いったい大根が何本買えると思ってるのよ」と嘆くと(母は高額なものは大根の本数に換算して考える癖がある) 父は即座に「136 本ちょい だな」と答えて「そういう話じゃないのよ」と母の怒りを更にかきたてたらしい。このように、まだ計算の速さは衰えていないし、世界の国々のことも良く知っていて、何を尋ねても即答してくれる。

それでも、直近の記憶が危ういのを父自身も自覚し、心ひそかに案じているのかもしれない。「認知症の予防には、手指を使ったり、音楽などが有効」と知って、父なりの努力をしようとしているのだろうか。

再び チェロを弾き始めようとした動機の、奥深い所にあるものについては 私は知る由もない。「謎なり」ではあるけれど、歳を重ねながら生きるということ (心情) に思いを馳せると 切なくもある。

 

  ↑ 父がセットで購入していたものはこんな感じです。YAMAHAのページからお借りしました。(付属品セット内容:オーディオケーブル、ステレオヘッドフォン、胸当て、弓、専用ソフトケース、松脂など)

 

★「謎なり、だよ」と小焼けが言う。何ごとかと聞いてみると、部活の A 先輩 (女子) の話らしい。

小焼けには 仲良くしている E 君がいる。中学時代に「E 先輩に告られたんだけど、まだ付き合ってもいないのに、速攻で振られた」とぼやいた小焼け。スマホ画面を見た 幼稚園時代から仲良しの Mちゃんに「これって、振られたんじゃなくて、『付き合って』と言われてるのよ。小焼けちゃんたら、読解力なさすぎ~」と笑われたエピソードがある。 

 ↓ E先輩との中学時代の思い出はここですyugure-suifuyou.hatenablog.com

 

中学生なので 付き合うといっても、自転車通学の E 先輩と バス通学の小焼けは、停留所1個分だけ 二人でお喋りしながら歩いて帰る程度だったけれど、そのひとときが良い思い出として残っているらしい。高校は E 先輩がいる学校を受験し、部活もまた同じになって楽しげに過ごしているようだ。

E 先輩の同級生に A さんがいる。E 君と A さんは高校入学後に 部活を通して 初めて知り合ったとのこと。ところがその 1 年後に、中学時代から E 君と仲良しだった 小焼けが入学し、同じ部活に入った。春に 2年生になった小焼けは 先日、A さんから「私、これまで 小焼けちゃんに失礼な態度をとってごめんね。今では私は小焼けちゃんのこと一番推しだからね」と言われて面食らったとのこと。Aさんとは学年も違うし 部活以外で顔を合わせることもない。彼女の言う「失礼な態度」をとられたらしいこと に 小焼けは気が付いていなくて、ただ 無口であまり会話をしない人だと思っていたらしい。

「なんで、急にあんなこと言われたんだろうねぇ。謎なり」と言いながら、初物のスイカを頬張っている。アオハルなり。