思い

(※9月3日に投稿したものに 書き加えていたら 長くなりましたので、 2 記事に分けて再投稿します)

 

浴室で目を閉じてシャンプーをしている最中、 不思議なことに 決まって脳裏に浮かんでくる人達がいる。親切で優しい人達だった。もう会うことも叶わない。今よりも もっと もっと未熟だった十代、二十代の自分の言動が ほろ苦い思いを共に連れてくる。「あんなこと言わなければ よかった」「こうすれば よかった」・・・うつむいて ゴシゴシと頭を洗いながら心の中で詫びる。私、死期が近いのかしらん?

 

小中高校では 2 学期が始まった。夏休みが終わる直前、TVのインタビューで「課題が まだ 8 個残っています」と答えていた高校生や「1日でできる自由研究 ありますか?」と 逆にレポーターに尋ねていた中学生がいた。 ん? 戸外でインタビューを受けているということは、期限ぎりぎりのカウントダウンが始まっているのに、この期に及んで、家で宿題を頑張ってはいないよね? お~い、大丈夫? かつての自分の姿に重なる。彼らは間に合ったかなぁ?

 

この時期になると、登校するのが しんどくて辛い思いをしている人達のことが心に浮かぶ。歌に出てくる南の島の王様の子ども達のように「風が吹いたら遅刻して、雨が降ったらお休みで」という学校生活が送れたらいいだろうけれど、なかなかそうもいかないね。

情報端末を使い、小中高校生の精神状態を尋ねる「心の健康観察」が広がっているようだし、メディアも「ひとりで抱え込まないで。 相談できる所があります」と具体的に連絡先を知らせてもいる。 気持ちがつらい人達に届きますように・・・。

 

 思い出すことがある。 まだ私が中学生だった時、「夏休みが終わると転校生がくる」という噂が流れた。「校長室に入って行くとこを見た」とか「アイドルのように可愛い女の子だった」とか情報はあったが、一体誰が見たのか、噂の出所も わからず確かめようもなかった。

みんな ワクワクして その転校生を待った。しかし新学期が始まっても、その子は姿を見せなかった。先生に尋ねた者もいたが、明確な答えは得られなかった。

 

 1年経ち、2年経ち・・・私達は卒業式を迎えた。卒業証書授与の時にも、その子の名前が呼ばれることはなかった。学期半ばに ひっそりと転校してきて、1 日も登校することなく、ある時また ひっそりと転校して行ったのだろうか? あるいは、登校しないまま 卒業証書だけが自宅に届けられたのだろうか?

 

私達はその子のことを「幻の転校生」と呼んだ。そして 高校に進学し、いつしか 話題に上ることもなくなった。

「幻の転校生」は実在したのだろうか? もしそうであれば、私達と共に更に 30 年の歳月を重ねてきたはず。「アイドルのように可愛い女の子」と言われた彼女は、美しいおとなの女性になっているだろうか。今頃どこで、どんな暮らしをしているのだろう?

彼女が 日々の生活の中に 小さな幸せを見つけながら、心地良く過ごしていたらいいな・・・と思う。