別れもあれば、出会いもあって

柔らかな風や花々・木々の芽吹きに 春の気配を感じては 心弾む今日この頃。春本番が待ち遠しい。

と同時に、この時期は 卒業、転勤、転職、転校、引越し・・・等で、慣れ親しんだ場所や人との別れが、全国のあちらこちらで展開される。

私にも、父の仕事の関係で 転校した子ども時代があった。移り住んだ幾つかの家のひとつは高台にあった。 お稽古事に出かけたり 友達と遊んだ後に 家に帰る道すがら、坂の途中で 夕焼け空や 辺りの風景を眺めるのが好きだった。家の近くまで来ると、夕餉の支度をする美味しそうな匂いが漂っていた。

あの家には 今 どんな家族が暮らしているのだろう? 夕暮れ時には 同じように美味しそうな匂いが立ちこめているだろうか? 

 

さて、時は現在に戻って・・・。先日 帰宅途中の見慣れた景色の中、遥か前方にふっと違和感を覚える場所があった。「何か違う感じがする」と思い、車が近付くに連れ 注意して見てみると、 明るい通りに店舗が並んでいたはずだったのに、一箇所だけ 人の気配のしない真っ暗な建物に変わっていたのだ。「あら?ここは 2 月10 日のブログに書いたあのコンビニがあった場所?」と思ったけれど、車のスピードを落とすのも危ないので、そのまま通り過ぎた。

 

翌日、同じ道を通る時に 意識して見ると、かなり高さのある 太い円柱に取り付けられていた看板が外されていた。ということは、オーナーが変わったという訳ではなくて 閉店なのだろう。

息子さんに引き継がれる前の オーナーだった あの お話好きな高齢の旦那様と、物静かな奥様の姿が目に浮かぶ。私は日々の買い物はスーパーで済ませるので、コンビニに行くことはそんなに多くはなかったけれど、たまに訪れてお二人に会えると 心和んだことを思い出して 寂しくなる。

 

それから更に数日後、同僚が「職場の近くにコンビニができたの知ってる?」と言った。通勤に使う道路沿いではないので、私は知らなかった。あの閉店したコンビニが こちらに移転したのかと思ったけれど (それなら嬉しい )、どうも違うようだった。同僚の話によると、オーナーさんらしき人は『転職してがんばるぞ!』という気合いの感じられる年配の男性で、にこやかな奥様らしき人も店内にいらしたようだ。訪れている人達と談笑されている様子から、とても友達の多いご夫婦のように見えたとのこと。産地直送かと思うような新鮮な野菜も並んでいて『もしかして、この野菜は お友達が作っているの?』と同僚は驚いたらしい。 ( ← あくまで、同僚の推測の混じった話です。コンビニのシステムはよく分かりません)

 

私のこの性格・・・ 仕事帰りに早速立ち寄らずにはいられない。お店の入り口付近は『職種が違うお店のオープンですか?』と思えるほどたくさんの花飾りで溢れ、商品名の入った旗も幾つか風に揺れている。一歩足を踏み入れるや いなや「いらっしゃいませ!」という明るい声に迎えられる。新しいお店なので、床も棚なども当然ピカピカだし、店内もとても明るい。省エネで照明が暗くなっているコンビニを見慣れている目には眩しい。同僚の言っていた野菜は既に売り切れていて残念だ。本部?からの応援もあるらしく、カラフルな法被姿の人達から「カードはもうお持ちですか? 今ならプレゼントがありますよ」などと勧められる。皆さん笑顔で、明るく大きな声だ。スタートって活気があるなぁ・・と思う。

そして、少し前に閉店して、真っ暗な建物になってしまったあのコンビニに思いを馳せる。 

コンビニの閉店と開店が たまたま重なったのだろうけれど、この時期の別れと出会いを改めて感じたのだった。

 

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