何が起きてます?(その4)

★訪れてくださった皆様へ

ご無沙汰のご挨拶だけ・・・と思っていましたのに、ブログでは「その1」~「その4」と続いてしまいました。 おどろおどろしい話で始まり、ネガティブなことをぼそぼそと綴るに至っています。それにもかかわらず、スターマーク・DM、或いは「コメント欄」や「ブックマーク」にメッセージをお寄せくださった皆様に 恐縮しつつも感謝の気持ちでいっぱいです。

今回の「何が起きています?」に頂いたコメントは大変勝手ながら「その1」から今回まで非表示に戻させていただきました。(あくまで「非表示」であって「削除」ではありませんので、私にはいつでも拝読でき、その都度、エネルギーをいただいています)。※ブックマークの方は、未だにシステムが分からず、申し訳ありませんが このままにさせていただいています)

お一人ずつにお礼を述べることも叶わず、このような形で失礼とは思いますが、お許しください。皆様のコメントから溢れる温かいお気持ち、心に染み入りました。本当にありがとうございました。

 

さて、ここからは、いつもの「タメグチ備忘録ブログ」に戻ります。病院という非日常の中でも、心に残る人々に出会うことができました。↓

★スタッフステーションの隣の部屋で二日目を迎えた夕方、向かいのベッドが急に賑やかになった。手術を終えてこちらに来られた方だろうか? 大声で「ワタクシは急いで家に帰らなくてはいけませんのよ。お洗濯物も取り入れなくてはならないし、夕食の準備もありますし・・・」などと叫ばれている。看護師さんが「○○さん、ここは病院で・・・」と説明されるけれど 納得がいかないご様子で同じことを繰り返される。

その都度来られるスタッフの方が同じ説明をし 去られて暫くすると、また大声で「どなたか いらっしゃいません? どうぞ早く帰してください!どなたか お願いですから!」と叫ばれたかと思うと、今度は「××ちゃん、ごめんなさいね。本当にごめんなさい。許してね」と、あらん限りの声を振り絞って慟哭なさる。

手術後の せん妄なのか、場所が変わって(施設から緊急搬送されて来られたようだ)ご自分の状況が理解できずに、パニックになっていらっしゃるのか・・・。

私に分かることは、この方には 今 とても辛い世界が見えているということ。お腹の底から絞り出すような叫び声・泣き声を聞きながら、私も切ない。

 

それにしても、この方の言葉遣いは丁寧で美しい。人は 長い間に積み重ねて来たことの根本は揺るがないのだろうか。

ん? そう考えると、私は将来どうなるの? うけないオヤジギャグを連発して 顰蹙をかうかも・・・。想像すると恥ずかしくなって、ちょっと照れる。

ずっと以前、友人のMちゃんが ぼそっと言ったことを思い出す。「ねぇ、夕暮れちゃん、将来認知症になったと仮定して、人によって いろんなパターンがあるじゃない? 物欲が強く出る人とか、徘徊しちゃう人とか・・・。私の場合、胸をはだけて『あらぁ、いい男ねぇ』なんて言い出したらどうしよう?」。

Mちゃんは、私達の仲間内では珍しく情熱的で、恋に関しても自分の気持ちに真っ正直に向き合って生きて来た人だ。ふむ。Mちゃん、もしそうなったら、私がちゃんと はだけた服を元に戻してあげるから。オヤジギャグを言いながら・・・(その頃は私も認知症になっている)

 

はだけた・・・といえば、小焼けが 友達と出かけて帰ってきた日、私に尋ねたことがあった。「(あの二人の言動は) どういう意味だったんだろうね?」。何のことかと詳しく聞いてみると次のようなことだった。

小焼けのスニーカーの紐がほどけそうになったので 直そうとしていると、一緒にいた R  君がいきなり小焼けの前に背中を向けて立ったのだとか。すると S 君が、「なるほどね。俺はそういうことが咄嗟にできないから、いろんな女の子に振られるのか?」と言ったそうだ。

オミクロン株が こんなに猛威を振るうようになる前の、夏休みの暑い日。小焼けはその日、胸元がふんわりとした洋服を着て出かけて行った。私はひらめく。あ~、この洋服のせいだ。靴紐を結び直そうと 体をかがめた時に ブラウスの中が見えたのかも。それを R 君がさりげなく他の人の視線を遮るように 前に立ってくれたのだろう。小焼けは「ふ~ん。ってことは、少なくとも R 君と S 君には見えちゃったのかぁ、私の胸の谷間。ま、見えたところで、Aカップブラではそう大した破壊力もなかろう」と のんびりと言う。さほど気にしている風もない。そりゃそうだ。幼稚園から一緒なのだから、もっと恥ずかしいこと(トイレに間に合わなかった等)もお互い知っている。

※ この R 君は、幼稚園時代に親子劇場があった時、お芝居の途中で 客席から「ドアを開けちゃダメだよぉ。オオカミさんが入って来るよ!!」と大声で叫んだことがある。その声につられて あちこちから「開けちゃダメ!」「オオカミさんだよ~」の可愛い声が上がり、舞台上の俳優さんは、ドアの前で どうしたものかと 開けるのをためらわれたのだった。正義の味方の R 君は高校生になって、ますます頼もしく成長しているのねぇ。

 

(横道に逸れました。入院中の話に戻ります)

ようやく容体も落ち着き 一般病棟に移る途中、エレベーターホールの椅子に腰かけた お爺さんを見かけた。膝を激しく上下させておられる。年齢を感じさせない力強く 素早い動き。踵が床に打ち付けられる音もする。

看護師さんが声をかけられる。「 Y さん、どうされました?」。Y さんはゆっくりと答えられる。「さっきから心臓の動きがおかしくてな、元に戻るように心臓を応援しとる」。

看護師さんは明るい声で「貧乏ゆすりして 自力で 心臓を動かそうとされてるの~? 夕暮れさんを病室まで送ったらすぐに戻ってくるから、ちょっと待っててくださいねぇ」とおっしゃる。Y さんは素直に「うん」とお返事される。

Y さんは元々ユーモラスな方なのか、年齢に伴う症状がそうさせるのか分からないけれど、看護師さんと Y さんの間に 柔らかな空気が流れて、私は ほっこりとする。Y さんは この後、ちゃんと診て貰われて呼吸が楽になられたことだろう。

 

★移った一般病室では、同室は たまたま高齢の方ばかりだった。食事は介助スタッフがお一人ずつに付かれているようだ。耳が遠い方達なので、大声での会話が飛び交う。 威勢の良い 早朝の魚河岸のようで 私も元気が出る。

その中のお一人はもうすぐ退院らしく、リハビリで歩行練習もなさっているようだ。定期的に理学療法士さん (男性) が 病室を訪れられる。歩行訓練の前に、ベッド上で体をほぐされるようだ。その時の会話も 大声なので自然と耳に入ってくる。

理学療法士さんのお人柄・会話の運び方が素晴らしいことに感心する (見習いたい)。患者 ( T さん) が話されたことについて、「そうなんですねぇ」と相槌を打たれた後に、ひとつ質問を付け加えられる。すると、T さんは更にその質問について話される。お二人の会話がゆったりと穏やかに進む。T さんの歩んでこられた時代から察しても ご苦労が多かったようだ。書物には残らないけれど、こうして市井の片隅で ひたむきに生きてこられた方達がいらっしゃる。お一人お一人にドラマがある。胸が熱くなる。(私もがんばって生き抜こう)

カーテンがあるので、病室ではお二人の姿を見たことがなかったけれど、一度だけ 廊下でリハビリの途中をお見かけした。ゆっくりと歩かれる とても小柄な T さんと、寄り添って進まれる背の高い理学療法士さん。『大家さんとぼく』のような ほのぼのとしたお二人だった。

 

(出会った方達のお話は まだまだありますが、書き切れないので 機会があれば いずれまた)

入院して ふつふつと湧き上がってきたものは、医療に従事される方達への感謝の気持ち。急性期病院だけあって重症患者も多く、しょっちゅうナースコールが響く中、テキパキと しかも明るく対応なさる。命を預かる職場のハードさに「使命感」「プロの心意気」などという言葉で語っては申し訳ない思いになる。加えて、コロナ禍も長きに渡り、ハードさにも一段と拍車がかかっていることだろう。改めて頭がさがる。

 

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