前世で 悪い男に酷い目に遭わされた?

大雨が続いている。ニュースによると、関東・東海地方の太平洋側では、昨晩から記録的な大雨となり、気象庁は河川の氾濫や土砂災害などに厳重な注意を呼びかけているとのこと。大きな被害が出ないことを祈るばかり。

 

そういえば、かねて住んでいた場所で 洪水が起こった。新婚時代(小焼けが生まれる前)から借りている家だったが、この辺り一帯が大雨に弱いということを知らなかった。初めての体験。

夫は仕事で帰れず、お隣さん達が「早めに避難しましょう」と誘ってくださっていた。時折 外を見ると雨は激しいけれど、庭にはまだ水が溜っていなかった。両親が「実家に避難するように」と言い、車で迎えに来てくれることになっていたので、当時1 歳にならない娘(小焼け)と二人で家の中で待っていた。

 

携帯電話が鳴る。通話口の向こう側で母が慌てている。「すぐ近くまでは来ているんだけど、夕暮れの家に続く道路に水が溢れて通れなくなってるのよ。消防車も立ち往生してる。私がいる ここまでは水が来ていないから、夕暮れの家の近辺だけだと思う。歩いて来られる?」

「えー!」と驚き、大急ぎで外を眺めると 既に 車のドア (下の部分を超えた辺り)まで水位が上がっている。大変! いつの間に!?

 

必要な荷物は準備できている。大慌てで 小焼けを抱っこして家を出る。普段は気が付かなかったけれど、緩やかに土地が低くなっている場所があるらしく、途中から更に水かさが増し、うわっ、太もも まで浸かる。「モデルの冨永愛さんや、女優の菜々緒さんほどの脚の長さがあれば良かったな」と初めて思った。

道路端は 蓋のない溝があるはずだから、落ちてしまわないように注意して進む。気は焦るが 水に足を取られ、ゆっくりとしか進めないのがもどかしい。

 

突然、曲がり角から消防士さんの姿が現われた。折しも 立ち往生していた消防車の人に、母が「娘と孫がこちらに向かって歩いて来ているんです」と助けを求めたらしい。傍まで来られた消防士さんは「大丈夫ですか」と声をかけてくださり、小焼けをひょいと抱っこしてくださった。 

小焼けは人見知りが始まり、パパと じぃじ以外の男の人を見ると大泣きをする時期だった。「うわっ、泣くわ。大泣きするわ」と身構えていると・・・あら? 泣かない・・・。幼いなりに状況がわかるのだろうか。泣くどころか、消防士さんにしがみつくようにさえしている。災害時の消防士さんや自衛隊の方達は 格段に 頼もしい。姿が見えただけで安堵する。恋に落ちそうになる (先日終了した TV「リコカツ」の主人公の気持ちがよ~く分かる)。

いえいえ、こんな不謹慎なことを言ってはダメ。以前にドキュメンタリーで見たのだけど、あの方達の日頃の鍛錬には凄まじいものがあった。森の中を流れる川の 遥か上に渡したロープにぶら下がって進んだり、目が眩みそうな高さの建物の壁面をぐいぐいと上られていた。そして、災害時の救助ともなると、二次災害によるご自分の命の危険と隣り合わせの中をプロとして頑張られる。ただただ頭がさがる。私たちを心身ともに守ってくださって ありがとうございます。 

後で知ったのだが、大雨は広範囲に降っていても、洪水状態になるのは私たちが住んでいた地域だけのようだった。その後、夫の転勤に伴い転居したので、このような体験をすることはなくなったけれど、大雨のニュースを見ると あの時のことを思い出す。

 

「人見知り」といえば・・・、小焼けの人見知りは 何故か「男の人限定」であった。同じ男性でも、パパと じぃじだけは例外だったので、法事で親戚が集まった時に「俺は子どもに好かれるタイプからだいじょうぶ」と言い出す者がいた。

法要も食事も済み、お寺様もお帰りになった後、久し振りに会った者達で 話に花が咲いている状況。法要の席で泣いて迷惑をかけないように、小焼けは別室で小学生の従姉妹達が遊び相手をしてくれていたし、その後 眠ってしまったので、男性陣の誰にもまだ会っていなかった。

「よっし、それでは、小焼けちゃんが昼寝から起きたら、誰なら泣いて、誰なら泣かないか試してみよう」ということになった。 

小焼けが昼寝から起きるのを待ち構えて、襖を 1 枚だけ閉め 全体が見渡せない場所で、私は小焼けを抱っこして待つ。まずは 自称「子どもに好かれるタイプ」の従兄(30代後半)が自信たっぷりに襖からそっと顔を出す。

うぎゃ~!!! 大泣きしながら 私に しがみつく。

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「▲▲(従兄の名前)早く隠れろ。小焼けちゃんが可哀相じゃ」と声が飛ぶ。顔が見えなくなると小焼けはピタリと泣きやむ。泣くのは顔が見えている 1 秒間だけ。「じゃあ、今度は俺」と次の一人が顔を出す。

うぎゃ~!!! しゃくり上げながら、あらん限りの大声で泣く。「あ~泣かせた。小焼けちゃん、ごめん」という声と共に 襖の陰に引っ込む。 

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普段は物静かな叔父まで参加している。優しい笑顔で「ばぁ~」と言いながら 襖からちょこっと覗く。

うぎゃ~!!! 顔をくしゃ くしゃにして 大泣き。

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結局、全員失敗。挙句の果てに「小焼けちゃんは、前世で悪い男に酷い目に遭ったに違いない」という 何の根拠もない結論で幕を閉じた。 一人につき 1 秒間だけ大泣きしながら、小焼けは「なんで こんな状態?」と混乱したかも。  小焼け、ホントに ごめん! 

 しかし、私は知っていた。以前、カフェで お店の若い男性が注文を取りに来た時には泣かなかったことを・・・。彼は惚れ惚れするような正真正銘のイケメンであった。法事の席では言えなかったけどねぇ。

 

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