言葉と仕草から学ぶ

帰宅した娘 (小焼け ) が話し始める。「今日ねぇ・・・」。

小焼けは、集団生活をするようになった ( 幼稚園に入った ) のを皮切りに、家族と一緒ではない時に自分一人で見聞きしたことを 家に帰ってから話してくれるようになった。それらは、友達や先生とのエピソードであったり、身の回りの自然界のことだったりで、目を輝かせて『大発見』を教えてくれた。

幼児の目線を通して見えたものは、私達には新鮮で、夫 と共に ( 時には電話で、小焼けの祖父母も )「へぇ~、そうなんだぁ」と相槌を打ちながら聞き入った。

 

小学校・中学校と 学年が進むに連れ、私達が知らなかった ( 或いは、忘れていた ) 世界の範囲は更に広がっていった。理科の分野( 不思議なことがいっぱい )が多かったけれど、社会・国語・技術家庭の時もあれば、外国のことなどもあった。知らなかったことを知ったり、調べたり、考えたりするのって わくわくして楽しいね。

 

高校生になった現在も、相変わらず「今日ねぇ・・・」と話してくれる時がある。先日の小焼けの話は次のようなものだった。

小焼けがいつもの駅から電車に乗った時、それほど混んではいなかったけれど(テレワークや休校の影響?)座席は既に埋まっていた。すると、目の前に座っていた女性が「鞄を持ちましょう」と声をかけてくださった。 

その時 小焼けは、中学生の時 授業で『電車の中で座席を譲られた時の対応』について、新聞記事を元に 意見交換をしたことを 咄嗟に思い出したらしい。

 

座席を譲られる立場として考えれば・・・、高齢にみえる方でも「私はまだ席を譲られる年齢ではない」と不愉快に思われる方や、「運動のために立っている」方もいらっしゃれば、「体力がないので座りたい」と思われている方もいらっしゃって、まさに十人十色だろう。

 譲る立場で考えれば・・・、「どうぞ」と席を立ったのに、相手の方が「結構です」と言われると 席が空いたままになり、ちょっと気まずい雰囲気になる。また、勇気を出して声をかけたことを後悔して「今度から 席を譲るのは止めよう」と思ってしまうかもしれない。

「学生 ( 若者 ) だって、疲れ切っている日もあるし、体調が悪い時もある。そんな時に 高齢の方が 目の前に立って『若いんだから、席を譲るのは当然』という態度をされると 辛い。だから、席を譲るのがしんどい時は、申し訳ないとは思うけど眠った振り ( 目の前の人に気が付かない 振り) をする」等の意見が出たらしい。

 

それらを思い出して、小焼けは「せっかく声をかけてくださったのだから、お願いしよう( 親切に甘えよう )」と思ったとか。それで、「ありがとうございます!」と言い、二つ持っていた鞄の内、軽い方を差し出すと「もう一つも どうぞ」と言ってくださったので、恐縮しつつも 二つともお願いした。

すると、その女性が「中に壊れ物は入っていませんか?」と更に尋ねてくださり、その静かで自然な口調と、預かった鞄を二つ 膝の上に乗せ 両手を回して丁寧に持ってくださった様子に、小焼けは 心打たれたのだと言う。

 

小焼けは更に続ける。「 9 年間バス通学をしていて、小学生の頃は 席を譲ってもらったら 相手の人の荷物を持つことはあったけど、『この人は 壊れては困るものを 鞄の中に入れているかも・・』とは思いもしなかったよ」。

相手のことに思いが及ぶ素敵な『おとな』の人の言葉だと 小焼けは感じ、電車を降りてから「中に壊れ物は入っていませんか?」と心の中で呟いてみたのだと言う。

 

バス通学の様子です ↓ 

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 ※ コロナ禍で 他の人との会話や接触も極力避けたい時なのに、ご親切にありがとうございました。子どもが親と一緒に過ごす時間は僅かなもので、あとは さまざまな場所で 本人が出会った方達に教えていただくことばかりです。こうしてまたひとつ、娘の中に大切なものを加えていただきました。(小焼けの母より)

 

※ 追記:小焼けの呟き

「心の中で呟いた」という言葉で思い浮かんだことがある。幼くてまだお子様ランチを注文していた頃、レストランで 突然「小焼けはね、もう大きくなったから、お子様ランチじゃないのが食べたい」と言い出したので、私達と同じものを注文してみた。すると、運ばれてきた料理をゆっくりと味わいながら「おとなって、こんな美味しいものを食べていたのか・・・」と ぼそっとつぶやいた。

 

幼い子達が 無残に命を絶たれたニュースを見聞きすると、この小焼けの言葉を思い出し、「世の中には美味しいものがたくさんあるのに、この子達はミルクの味しか知らずに(或いは それすら知らずに)命の灯火を消されてしまった」とやりきれない思いがするのです。

 

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