あんなにイケメンなのにねぇ・・・

TV番組は予約しておくけれど、録画をなかなか見ないので溜る一方。ようやく見たのは 20 日も前に放送されたもので、息子を装った詐欺(未遂)事件の犯人逮捕に協力した「お母さん」(70 代女性) に密着したものだ。


刑事さん達が傍にいてくれるとはいえ、騙された振りをして 犯人と何回も電話のやりとりをするのは さぞ怖かったことだろう。それでも、犯人からの電話を待っている間に 「お母さん」はこう言われた。「バカだねぇ。なんでこんなことして・・・。年寄り からお金を むしり取って」。姿にはモザイクが かかっていたけれど、話し方などから これまで真面目に 実直に生きてこられたのが伝わってくる。それ故に「お母さん」の言葉は胸に響く。

 

「お母さん」は最後にもう一言、呟かれる。現行犯で手錠をかけられた「受け子」(21歳・男性)が刑事さんと去った後、「バカだねぇ。あんなにイケメンでねぇ。まともに働いたらいいのになぁ」。 
「あんなにイケメンでねぇ」というのは、TVを見ている人から「それ、関係あります?」と笑顔でツッコまれる所かもしれないけれど、そういえば、私もそう思ったできごとがあった・・・。

 

時を遡ること数年前、職場のドアが激しく叩かれた。同僚達は少し前に帰宅し、私しか残っていなかった。何ごとかと思ってドアを開けると、30代前半くらいの男性が立っている。

彼は突然まくしたてる。「今まで我慢してたけどなあ、もう我慢の限界!!」など。私の職場は不特定多数の人が訪れるところではないので、今までこういうケースはなかった。それでも、職場の誰かが何か迷惑をかけ、腹に据えかねた彼が 遂にこうして苦情を言いにきたのかと思った。私は恐縮しつつ聞いていたけれど、ん? なんか変じゃない? どうも話の辻褄が合わない。「お名前を・・・」と尋ねても、名乗らない。おい(心の声)

 

もしかして、お酒に悪酔いしてる人?(顔色が青白い )。それとも、薬物などによる被害妄想? (使っている人を見たことはないけど)。 いずれにしても下手に刺激して刃物なんか出されると危ないなぁ。ここはひたすら、相手の言うことを否定せずに、気が済んだら帰ってもらおう。

 

彼はまだ まくしたてている。意味不明な同じ話を繰り返す。う~ん、どうしたものか・・・。いつもはゆっくりした私の頭が、くるくると回る。(以下★は私の心の声です)

★もう 15 分くらい経過したなぁ。こんなに大声で怒鳴り続けて疲れちゃわないかしら? たいしたエネルギーだけど、この体力をもっと有意義に使えないものかなあ?

★これって、法的には何にあたる? 私がドアを開けたのだし、部屋の中までは入って来ていないから住居不法侵入にはあたらないのかなぁ? 「火をつけてやる」などと脅されたり、金品は要求されていないので恐喝罪にもならないかなぁ? でも、こちらが恐怖を感じた段階で恫喝にはなる? 

★ドアを無理やり閉めると 更に逆上しそうだし、証拠を残しておくために 録音なり映像なりがあった方がいいんだろうけど、スマホを取りに部屋に戻ろうとして 敵?に背中を向けると危ないかも(戦国武将か)。

う~む。・・・・・・ 20 分くらい経過した後、ようやく彼は去った。結局、どこの誰なのか、何に怒り狂っていたのか、最後まで解らなかった。

 

翌日、職場の同僚や上司に話すと、警察に届けた方がいいということになった。警察署に出向き、昨日のいきさつを話していると、ひとりの警察官が「もしかして、こういう感じの男ですか?」と特徴を述べ始められた。「そうです!そうです! ご存じですか? 他に事件を起こしている人ですか?」と尋ねたけれど、「まだ確定した訳ではないので言えませんが」とのこと。 さすがプロだ。 口が固い。真相がわからず 私は つまんない。

「今度その男が来たら すぐにドアに鍵をかけて、決して開けないでください。そして警察に電話を」「パトロールの時に、職場近辺にも気を付けておきますから」と言ってもらって警察署を後にした。

 

その時、私はふっと思ったのだった。「それにしても、昨日の彼、整った顔立ちだったなぁ。青白かったけど、肌がきめ細かくて綺麗だった。あれだけのイケメンが惜しい(何か もっと世のため 人のために使えないものか・・・)」。

TV で 70 代の「お母さん」が同じようなことをおっしゃっていたのが、ちょっと嬉しかった。怖い思いをしながらも、そう思いますよね。「あんなにイケメンなのにねぇ (しみじみ)」

 

 ↓ 作者のpopperさんによると、タイトルは『地蔵』だそうです。優しいお顔立ちのお地蔵さんに癒やされます。私の汚れた心を綺麗にしてくださいまし。なむ~。

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