蝶だったの? それとも蛾? おばあちゃ~ん

休日に、庭の入れをしようと外へ出た。植物好きの娘 (小焼け) が花殻を摘んだり、水遣りをしたりして丹精込めた花々が、梅雨明けの照りつける太陽を浴びて 綺麗に咲いている。

すると、どこからともなく一羽の蝶がすぅ~と現われた。白い模様がある黄色い可愛い蝶だ。小焼けの花々の上を 弧を描くように優雅に飛んで、暫くするとまたどこかへと消えた。

「わぁ! ひいおばあちゃんが 蝶になって 私達に会いに来たのよ。きっと」と小焼けが嬉しそうに言う。そっか・・。そうよね、この時期に我が家の庭で蝶を見たのは初めてだった。ひいおばあちゃんだったのかもねぇ。

 

そして翌日。仕事が終わって同僚達と帰宅しようとドアを開けると、突然、黒いものが勢いよく中へ飛び込んで来た。「クロアゲハだ!」と後輩が叫ぶ。昨日の蝶に引き続いてのことなので、『亡くなった祖母が、私の職場にも来てみたかったのかしら?』と咄嗟に思った。

「蝶のクロアゲハじゃないよ~、これは蛾だ」と先輩が叫ぶ。動きが素早くて、蝶なのか蛾なのか見極めができない(もともと知識がないのもあるが)。いずれにしても、私達が今から鍵を閉めて帰宅すると、屋内に閉じ込められて可哀想だから、外に出るように皆で誘導しようということになった。

ある者は持っていたバッグをバタバタとしながら、蝶?蛾?が玄関の方へ行くように追う。ある者は(もし蛾だったら 鱗粉が降りかかると イヤなので、避けながら)「こっちじゃなくて、あっちよ」とその黒い物に声をかける  ( 日本語で通じるのだろうか?)。

いつの間にか、後輩が掃除用のモップを持って来た(彼も動きが素早い)。モップをビュンビュンと振ると、蝶?蛾?は避けるように飛びながら、大きく開いた玄関口へ向かう。『もうひと息で外に出る』と思った時に、後輩の振ったモップが蝶?蛾?に触ったらしく、ポトンと床に落ちた。それっきりピクリともしない。

「あっ、殺してしまった! そんなつもりではなかったのに・・・。ごめん」と床の上を見つめながら 彼は謝る。それからすぐに 柔らかそうな紙を持ってきて、蝶?蛾?をそっと包んだ。 小学生だった小焼けが、夜店で買った金魚が死んだ時に、庭にお墓を作ったのを思い出した。『まさか、彼は 蝶?蛾?のお墓を作るとは言い出さないよね?』と思っていると、「ちょっと待っててください」と言いながら、急いでどこかへ行き、手ぶらで戻ってきた。

「どうした?」と尋ねると、「トイレに流してきました」とのこと。(清々しい顔に見えるのは気のせい?) 「えっ!」と驚くと「だいじょうぶですよ~。さっきの紙はトイレットペーパーだから そのまま流しても」と言う。(そっちかい?)

 

ペーパーに包まれた蝶?蛾?が便器の中で、くるくると回りながら水と一緒に流れていく様子を想像する。『もしかしたら、おばあちゃんが姿を変えて 訪ねてきてくれたのかもしれないのにな・・・』と申し訳なく、そして ちょっと切なかった。

 

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※(帰宅して、蝶と蛾の違いを調べてみた。『羽を閉じて止まるのが蝶で、広げて止まるのが蛾』とか『昼間に活動するのが蝶で、蛾は夜』とあったが、『蝶でも体温をあげたい時は羽を広げてとまる』ともあるし、『昼間に飛ぶ蛾も多くいるし、夜しか飛ばない蝶もいる』とのことで、一概に決められないらしい )

 

おばあちゃん、蝶に変身するつもりが、間違えて蛾になっちゃったの? それともあれは、後輩が言うように黒アゲハ蝶だったの? はてな