スクラップと母の想い

2019年5月20日

実家の母は、自分の部屋にお洒落な大きな箱を置いている。
「何が入っているの?」と尋ねると「スクラップ」だと言う。
中を覗くと、切り抜きがいっぱい。


私が、「項目別にフォルダーを作ってパソコンに保存しておけば、読みたい記事がすぐに探せるんじゃない? してあげようか?」と言うと、 「すぐに必要なものは、別にとってあるし、暇な時に 箱から適当に取り出して読むのが楽しいのよ。 一度は読んだはずなのに、内容をすっかり忘れてて、また新鮮な気持ちで読めるわ」と笑っている。

 

私は、その箱の中から幾つかの切り抜きを取り出す。
認知症関連のものが多い。まだ祖母が実家に居た時のものだろう、在宅介護か施設にお願いするかという記事や、同じ立場の人達の会とか、更には、自分が認知症にならないために、というのもある。

 

その他には、社会の動きに怒りを覚えているものや、ほのぼのするエッセイや、おしゃれで食欲をそそる料理や、美術展やコンサートの情報(実際にはなかなか行けないだろうけれど)もたくさんあった。

 

それらは、その当時の母の心を映すものだったのだろう。

それらを眺め、母はいろんな情報を取捨選択しながら、自分の心情にも折り合いをつけつつ、がんばってきたのだと思った。