幻の転校生

2019年9月17日

夏休みが終わって2週間過ぎた。
学校に行くのが しんどくて辛い思いをしている子達が、全国には たくさんいるのだろうなぁと、ふと思う。

南の島の王様の子ども達のように「風が吹いたら遅刻して、雨が降ったらお休みで」という学校生活が送れたらいいのだろうけれど、なかなかそうもいかないね。

 

思い出したことがある。 あれは まだ私が中学生だった時。
「夏休みが終わると転校生がくる」という噂が流れた。

「校長室に入って行くとこを見た」とか「モデルのような可愛い女の子だった」とか情報はあったが、一体誰が見たのか、噂の出所も わからず確かめようもなかった。

 

みんなわくわくして その転校生を待った。
しかし新学期が始まっても、その子は姿を見せなかった。
先生に尋ねに行った子もいたが、明確な答えは聞けなかった。

 

1年経ち、2年経ち・・・私達は卒業式を迎えた。 卒業証書授与の時にも、その子の名前が呼ばれることはなかった。

 

学期半ばに ひっそりと転校してきて、1日も登校することなく、ある時またひっそりと転校して行ったのだろうか? あるいは、登校しないまま 卒業証書だけが自宅に届けられたのだろうか?

私達はその子のことを「幻の転校生」と呼んだ。
そして、自分達は高校に進学し、いつしか その子が話題に上ることもなくなった。

 

あの子は本当に実在したのだろうか? 
もしそうであれば、私達と一緒に歳を重ねてきたはず。
今頃どこで、どうしているのだろう? 

世間の基準ではなく、その子の基準で「幸せなこと」を見つけて、元気で過ごしていたら良いな・・・と願った。