まだ夏の暑い日、ショッピングモールへ出かけた。遠いのであまり訪れる機会もない。 久し振りに行くと、店内の様子や テナント等も かなり様変わりしていた。
新しいテナントの中に、革製品を蘇らせるお店があった。
ショッピングモールは お店ごとのドアが無いので 、通路からでも様子が見える。
壁に、バッグのビフォー・アフターの製品が飾ってあった。
ひとつのバッグを二等分し、左側は「えっ! お気の毒に」と思える程の古いビフォー、右側は「どう!私って綺麗?!」と言わんばかりの新品同様のアフター。
他に展示してある靴なども、左右でビフォー・アフターと分かれ、その違いは一目瞭然。 すごいなぁ・・・と、しばし眺める。
以前、TVで 革製品を蘇らせる番組を見たことがある。
数え切れないほどの試行錯誤・積み重ねられた努力が生み出した「匠の技」と、「プロとしての心意気」が作り出す見事さに感嘆したことを思い出す。
そういえば、家にもビフォー状態の 夫のバッグがあったなぁ。
夫は、あまり物にはこだわらない人で、インテリア等も 私がチョイスした物で何でもOKだ。
洋服も 一緒に買い物に行き、似合いそうなものを数点選んで 「どれにする?」と尋ねると「これにする」とあっさりと決める。(※家電製品・車・DIY用の工具だけは 性能にこだわりがあるらしい)。
その夫が、初めて「これいいなぁ」と言ったものがあった。場所はヨーロッパの某所 (諸事情により ざっくりとで ごめんなさい)。夫が手に取っている品は 紳士用のショルダーバッグだった。
紺色と青の中間の落ち着いた色合い。機能的なのにデザインも美しい。私も素敵だと思った。
夫は 私に付き合って出かけて来ただけだが、待っている間に ふと、目にとまったらしい。私の買い物が済んでも、まだ手に取って、バッグの向きをかえたり、中をのぞき込んだりして眺めている。
こんな夫の姿は珍しく、よほど気に入ったとみえる。
お値段はちょっと勇気を振り絞る必要があったと記憶しているが、結局 購入して帰った。
あれから10数年。色合いも変わってきた。少し古ぼけた感じもする。
それでも夫は「これが革製品の味わいだ」と言い、相変わらず使用していた。
仕事で使うものではなくプライベート用なので、年月を感じさせるものであっても、本人が気に入っているのならそれでも良いかな・・・とそのままにしておいた。
そして、今回のお店との出合い。革製品のビフォー・アフターを 一緒に目にした夫も心を動かされたらしい。
後日、夫のショルダーバッグを持って、相談に行った。
感じの良いオーナーさんは、どういう過程を経て生まれ変わるかを、笑顔と共に丁寧に説明してくださった。
日本ではあまり目にしたことがない青の色合いが取り戻せるか 気になった。ショルダー紐の裏側根元部分の色が 元の色に近いと思われ、その色に合わせて調合できるとのこと。
「洗い直しから始まり、これだけの過程が必要とは・・・大変な作業だ」と思いつつ、仕上がりを楽しみに待つことにする。
2か月足らずで、仕上がった。 おおおおお! なんとお見事!
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隅々まで 丁寧な仕事でバッグを仕上げ、 物に命を与えた 外国の職人さんの技。
そして、同じく手作業で、物に命を蘇らせた 日本の職人さんの技。
「美味しいお漬物があれば ご飯3杯いけます!」というくらいの技?しか持たない私は ,ちょっと自分が情けなかった。
そして、ただただ、尊敬と憧憬の念を抱くのだった。