天才?が迷惑をかけながら 大きくなった

娘 (小焼け) が怒っている。 さっきまで数学の復習をしていて、「応用問題がすらすら解けるようになった」と嬉しそうにしていたのに・・・。「どうしたの?」と尋ねると「全問解けた!」と意気揚々と答え合わせをしたら、1 問だけ不正解だったらしい。

弟が忘れ物をして、兄が自転車で追いかける問題を、久し振りに解いてみたのだと言う。同じ傾向の問題を繰り返し解く内に「楽勝 ♪」になっていたはず。でも、正解は『12 分後』ではなく『追いつけない』なのだそうだ。
学校までの距離と、二人の速さを計算して比べると、小焼けの出した 12 分後には、弟はもう学校に着いているとのこと。「でも、お兄ちゃんは 学校の中まで行って、ちゃんと弟に届けたはずよ」 

う~ん。 問題は『何分後に追いつくか』であって、『ちゃんと届けられたか』ではないのよねぇ。 小焼けはまだ不満気だ。「だからねぇ、明日必要なものは 前の晩に確認してから寝れば、忘れるはずないよ。お兄ちゃんに迷惑かけてからに・・・」。忘れ物をした弟に八つ当たりをしている。

・・・・・・娘よ、気持ちはわかるけどね

 

『迷惑をかける』といえば、小焼けだって・・・、と思い出す。遡ること 10 数年前の日曜日 (あまりのショックで、曜日まではっきり覚えている)、私がトイレの掃除をしていると、お昼寝から目覚めた小焼けがヨチヨチと歩いてきて、ぽちゃんと便器に何か投げた。 

わぁ! 私の携帯じゃない?! どうして、こんなことをするの~?! お風呂に入る時に、アヒルさんとか ヨットさんとか浮かべるから、その感じだったの?  問いかけたところで、本人にも分からないだろうが、尋ねてみたくなる。

便器の中は 掃除を済ませたばかりだったのが せめてもの救い。急いで拾いあげる。(当時の携帯はさほど防水機能もしっかりしていなかったような記憶がある)。焦る。携帯の中に入っているもの(仕事関係・友人・知人・親戚・お店等の電話番号、住所録や、年間スケジュール表や、撮りためた写真など)のことが、私の頭の中を駆け巡る。全て消えてしまうかも。ああ、どうしよう? 困る!

 

思わず、口にしてしまった。「もぉ~! 小焼けの ばっかん」。すると、小焼けがもぐもぐと つぶやき始めた。「小焼けのばっかん」「小焼けのばっかん」・・・い、いかん、反芻して学習しようとしている。この年齢の学習能力を甘くみていた。

案の定、夫が帰宅した時に「パパ~」とヨチヨチと駆け寄り「小焼けのばっかん」「小焼のばっかん」と言い始めた。膝を屈伸させ、頭を上下に振りながら 歌うがごとく 楽しそうだ。

夫は状況が掴めず、「娘に、一体 何を教えてるの?」と尋ねる。私はひとしきり説明する。「そうなんだぁ。怒り心頭に発しながらも『バカ!』とか「あほ!』とか言わずに、咄嗟に『ばっかん』と柔らかめにしたんだね」と言う。褒めてくれてます? ありがと。

夫は続ける。「この年齢だと、『ブーブー』とか短い単語が言えるくらいなのに、小焼けはこんなに長い言葉を覚えたんだねぇ。天才かもだよ」・・・親バカか?

時は流れ、天才の期待 高かった娘は、数学の問題で 5人+ 0.8 人まで舟に乗せようとしていた。舟に乗っている小数点の人の姿を想像すると怖い。

 

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