昭和のおばちゃん、一生懸命考える

法事があって親戚の家に行った。そこには従姉妹のMちゃんが帰省していた。彼女の第二子 (生後 6 ヵ月) は ニコニコとよく笑う可愛い男の子だ。 

Mちゃんは「夕暮れちゃんに抱っこしてもらおうね」と、赤ちゃんに話しかけながら、抱っこさせてくれた。赤ちゃん特有の柔らかな感触が幸せを運んでくる。「はい、パチリ(Mちゃんのスマホで撮影)」。 「○○叔母ちゃんにも抱っこしてもらおうね」。「はい、パチリ」。 それから その場にいる全員が次々と抱っこして写真を撮った。久しぶりに会う親戚ならよくある光景なのに、私はなんだか とても嬉しかった。


というのも、新聞の投稿欄に先月載った記事のことが 心の片隅にあり「赤ちゃんに接する時には、お母さんの気持ちを尊重しなくては・・・」という思いになっていたのだ。それで、Mちゃんが何の くったくもなく「皆さ~ん、私の赤ちゃんを抱っこして 1 枚ずつ写真を撮らせて~」と言ってくれたことに ほっとしたのかもしれない。

 

最初の投稿に対する意見や記事が、僅か 1 か月の間に数回も掲載されたところをみると、反響も大きかったのだろう。(それらの中で一番新しい特集記事の一部です ↓ ) 

★ 朝日新聞 1月24日「ニュースQ3」より
【「私の赤ちゃんに勝手に触らないで」。そう題した投稿が朝日新聞の「声」欄に掲載されたのは昨年 12 月。東京都内に住む母親 (31) が生後6カ月の息子を連れ、病院の待合室にいると、80 代くらいの女性に「かわいいわね」と、息子の素足を触られた。母親はまだ免疫力が弱い我が子を触られることが心配で、困惑したことをつづった。普段から息子にひざ掛けをかけたり、帽子をかぶらせたりして触られないように「自衛」しているという。「神経質になっているかもしれないけど、触ってほしくない」と母親は話す。 投稿には反響があり、「年齢に関わらず他人の体に触れるのは配慮が必要」「私もつい触ってしまう」「潔癖になりすぎないで」といった意見が寄せられた。】


☆ 補足すると・・・
投稿したお母さんは、自分の赤ちゃんが見知らぬ 80 代の女性に触られるのが嫌で、一旦自宅に帰り、赤ちゃんに靴下を履かせて、1 時間後に再び病院に戻った。先程の女性はまだそこに居て、今度は赤ちゃんの手を触ろうとしたので、お母さんは「あっ」と声を出し、自分の手で赤ちゃんの手を覆ったとのこと。すると 80 代の女性は 「手は洗っているから大丈夫よ」と言い、赤ちゃんの手を握った。お母さんは最後にこう綴っていた。【どうかお願いです。可愛く思って下さるのはありがたいのですが、許可なしに 私の大切な子どもに 触るのはやめて下さい】


同じ「ニュースQ3」の記事の中に、小児科医の意見(「免疫力の低い赤ちゃんに触ると接触感染する恐れがある」)や、京都大学教授(発達科学)の意見(「赤ちゃんにとっては、触られることがプラスの場合もある」)も載っていた。

私にはお母さんの心情もわかるし、専門家の意見にも「なるほど」と頷ける。しかし、それでもなお、言葉では表現できない「何か」が心の奥底に残った。

 
私の場合はどうだったかなぁ? 娘 (小焼け) が赤ちゃんだった時、この投稿のお母さんのように一生懸命に娘を守ろうとしたかしら? う~ん。 そういう記憶がない。 

覚えているのは・・・(私の実家の両親にとっては初孫の) 小焼けが生まれてからというもの、「祖父母 初心者マーク」の二人は文字通り「舐めるような」可愛いがり方で、抱っこしまくるわ、頬ずりしまくるわ、手足も触りまくるわ…。今 思えば「衛生面は一体どうなってましたぁ?」というほどであった。今回のことをきっかけに、14 年も経って ようやく気が付いたところをみると、赤ちゃんだった娘が 「触られまくる」ことを、私自身も気にしていなかったのだろう。(相手が見知らぬ人ではなく 実家の両親 ということが大きいのだろうが)


(新聞投稿したお母さんの赤ちゃんと同じ生後 6 ヵ月の息子を持つ) Mちゃんに記事のことを話し、「Mちゃんはどうなの?」と尋ねてみた。

Mちゃんが結婚してからずっと暮らしている所は、ご近所とのお付き合いもあまりないそうだ。しかし、ベビーカーを押して出かけると、見知らぬ人から 「可愛いね」と声をかけられたり、中には「お手々も あんよも ムッチ ムチねぇ」と、赤ちゃんの頬や手足をツンツンとする人もいるとか。

Mちゃんの息子はそろそろ人見知りも始まる時期だと思われるが、笑いかけられると見知らぬ人にも ニコニコとよく笑うそうだ。 日中はひとりで子育てをしているMちゃんは、そんな ひとときが嬉しいのだと言う。


ここまでは、私の子育て時期の記憶と、Mちゃんの日常生活のひとこま。 赤ちゃんを持つお母さんにはそれぞれの考え方があるし、生後 6 ヵ月といえば、母親からの免疫物質も消えていく時期でもあり 感染などの心配もわかる。ましてや、投稿のお母さんは病院内での体験だ。その後 新聞には、子育て中の別のお母さんや、先輩お母さんからの意見も掲載されたが、最初の投稿のお母さんの「自分の赤ちゃんを守りたい」という強い意志は揺るがないように思える。どちらが正しいとか、育児はこうあるべき とかの問題ではなく、周りの人間がお母さんの気持ちに寄り添っていかねばならないのだろう。

 

「ニュースQ3」記事の最後にこうあった。 
助産師で東京情報大学の准教授 (母性看護学) は「社会全体で子どもを見守る空気が薄れ、親が周囲への警戒心を抱くようになったことも、『触られたくない』につながっているのかもしれない」とみる。相手に嫌な思いをさせないために、「触りたくなっても、まずはひと声かけてみて」と提案する】


そういえば…私は子ども好きだけれど、偶然出会った見ず知らずの赤ちゃんに触った記憶はないなぁ。 ただ、目と目が合うと、思わず にこっと笑いかけてしまう。赤ちゃん  (または幼児) も お母さんも笑い返してくれれば、その次には、離れた距離を保ったまま静かに「いない、いないばぁ」をしてみたり、言葉が理解できそうな年齢なら 「幾つ?」と尋ね、相手が指を2本とか出してくれれば 「あらぁ、お利口さんねぇ」などと言ってしまう。(隠しきれない、昭和のおばちゃんだ)


思えば…令和のお母さん達とは年齢差も開いてきたなぁ。 育児に関しての考え方も異なってきているのだろう。 そのことを改めて心しておこうと思った ここ 1 ヵ月。(チョット サビシイナ )。 

 

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