大統領選で思い出してしまいました。心が暴れております

アメリカ大統領選の報道を見ると、なんともいえない感情がこみあげてくる。 苛立ち・怒り・空しさ・情けなさ・寂しさ・悲しみ・やりきれなさ・・・。

こんな感情をおぼえたことが、過去にもあったと思い出す。思い出そうとした訳でもないのに、勝手に浮かんでくる。

 

私には『 Y おばちゃん』がいる。かなりの遠縁になるけれど、実家の母とは子ども時代から仲良しとのことで、私も生まれてから今日に至るまで、随分可愛がってもらったりお世話になっている。

『 Y おばちゃん』には息子がひとりいて、私は『 T お兄ちゃん』と呼んでいる。『 T お兄ちゃん』には先天性の病気があり、身体には大きな傷跡が何カ所もあるらしい。医学が進歩した現代でもまだ治療法が確立しておらず、完治することは難しいとのこと。

 

身体のことは自分の努力ではどうしようもできないけれど、T お兄ちゃんは勉強が好きだ。高校は名の知れた進学校に進んだ。小学校時代から障がいのことでクラスメイトから心ないことを言われたり、嫌がらせも受けたりもしたらしいけれど、T お兄ちゃんはへこたれなかった。

高校生になっても、積極的に生徒会活動や学校行事にも取り組み、学園祭ではスピーチをすることになった。T お兄ちゃんのスピーチを聞こうと、Y おばちゃんに誘われて私 (当時中学生) も行った。(私の両親は地域行事と重なり、行けなかった)

 

T お兄ちゃんが舞台に上がり話し始めると、驚いたことに太い大きな声でヤジが飛んだ。私はびっくりして耳を疑い、何が起こっているのか咄嗟には理解できなかった。そのヤジはTお兄ちゃんの障がいに関することだったり、脈絡のない嫌がらせの言葉であったりした。同じようなひどい言葉が続いたことに 更に驚いた。

 

私は隣の席の Y おばちゃんの手をぎゅっと握った。母親である Y おばちゃんがどんな気持ちで その状況の中にいるのかと思うと心配になった。と同時に、Y おばちゃんの手を握っていなければ、私は立ち上がって「高校生にもなって、言っていいことと、悪いことも分からないの!? 人を傷つける言葉を平気で吐いて、恥知らず!」などと叫び出しそうだったのだ。Y おばちゃんは「分かっているよ」とでも言うように、私の手をぎゅうと握り返してくれた。

 

その時、飛び交うヤジの中、ひときわ通る女子高生の声がした。「ドンマイ!!」 「 ▲▲君、負けるな!!」。その言葉に誘われるように「がんばれ!!」コールが続いた。( かっこいいお姉さん達だ。好きだ。憧れる )。エールのお陰で、ひどいヤジは止み、T お兄ちゃんは立派にスピーチを終え、絶大な拍手をもらった。

 

そう、米大統領選で思い出したのだ。 学園祭の時、T お兄ちゃんへ向けられた暴言を聞きながら、なんともいえない感情がこみあげてきたことを・・・。苛立ち・怒り・空しさ・情けなさ・寂しさ・悲しみ・やりきれなさ・・・。同じ会場にいらした先生方が止めに入られなかったことが、不信感と共に それらの感情に拍車をかけた。

そして思った。「こんな 偏差値だけが高い、しょうもない高校生、将来 ろくでもない人にしかならないよ」。

 

帰宅して、この出来事を両親に話した。「偏差値が高いからって、人間が優れているわけじゃないよね。それどころか、他の人を見下すようなことをしたりして、人としては最低よね」。

すると両親が言った。「そういえば、総理大臣に似たような人がいたよ。ことあるごとに自分の学歴を自慢する人だった。そして、自分の政策を批判・追求する野党の人に、小馬鹿にした顔で『君、大学はどこ? ○○大? あ、私大ね』などと。70 年近く生きてきて、誇れるものは学歴だけ? あの人の人生なんだったの? ましてや、政治家なのに 自分がしてきたことに胸を張れるものは何もないのかしらね。情けない」。

 

中学生時代に経験した このできごとは、私の心の奥深くに とどまったらしい。

時は流れ、新聞などで「パワハラ上司」などの記事を見つけると、「あの時の高校生のなれの果て? まだ性懲りも無く 人を傷つけているの?」なんて思ってしまう。 また、自分の意見をきちんと言える、凜とした素敵な女性に出会うと、「もしや、あの時の女子高生?」とも思ってしまう。(地域も年代も違うので別人とは分かっているけれど)。

 

ああ、書いている内に、さまざまな感情の中の「怒り」が突出して こみ上げてきた。人間って怒ると血圧が上昇すると聞いていたので、実証してみようと思ったけれど、家には血圧計がなかった。

しかし、体温計ならある。う~む、仕方がない。せめて熱が上がっているか計ってみよう。

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結論: 平熱だった

 

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11月9日追記:

バイデン新政権で、女性として初の、またアフリカ系・アジア系としても初の副大統領に就任するカマラ・ハリス氏の勝利演説の力強い言葉が胸に響く。

【私が初の女性副大統領になるかもしれませんが、最後ではありません。すべての幼い女の子たち、今夜この場面を見てわかったはずです。この国は可能性に満ちた国であると】

【(19歳でインドからやってきた)母のことを考えています。多くの黒人の、アジア系の、ラテン系、ネイティブアメリカンの女性たちのことを私は考えています。彼女たちによって道が切り開かれました。】

【私は副大統領としてしっかり取り組みます。ジョーがオバマ氏に対して副大統領として尽くしたようにです。これからが真の仕事となります。大変な仕事です。必要な仕事です。人々の命を救い、この病気に打ちかつのです。経済を立て直します。人々への差別をなくすことにも取り組んでいきます。気候変動と戦い、国を結束させ、アメリカの国としての魂の傷をいやしていかなければなりません】

 

もしかして、この人はあの時の女子高生!?

彼女の心意気に希望を得て、今晩は穏やかに眠りにつけそうです。おやすみなさい

 

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