銀行へ行った。ウィルス感染予防対策として、椅子は 窓口に平行に 縦長に並べられ、隣り合って座れないように 一つおきに紙が貼ってある。
私の窓口の順番は 8 人待ち。長い。仕事に戻らねばならない時間に間に合うだろうかといささか心配しながら待っていると、あら?? 夫の声がする。
声のする方を見ると、ひょろりと背の高い男性が 窓口の人に何やら尋ねている模様。後ろ姿で 顔は見えない。公の場なので本人は抑えて話しているつもりでも よく通る声が夫と同じだ。髪型は違うけれど、頭に手をやって くしゃくしゃとするとこんな感じになるなぁ、と思いながら眺める。髪の長さは同じね。
彼が身につけているのはカジュアルウェア。今までになく暑い日になったとはいえ、早々と初夏の装い。でも、夫はこんな鮮やかな色と柄の洋服は持っていないはず。
なんで~? 平日の昼間よ。いつものスーツとネクタイはどうした?!
失礼とは思ったけれど、気になって耳を澄まして会話 (声) を聞く。銀行の人に 自分の相談したい内容を伝え、どの窓口の順番待ちをすればいいのか・・・などと質問しているようだ。マスク越しとはいえ、聞けば聞くほど 夫にそっくりな声(そうだ、遥か昔、私はこの声に くらくらときたのだった・・と思い出す)。 ゆっくりとした話し方も同じ。
なんで~?
話の内容が更に気になる。投資関連? 知らんけど。
その人に近付いて 顔を覗き込むわけにもいかない。謎が謎を呼ぶ。
小説や映画で、別の顔を持ち 巧みに二重生活をしている人の話があった。まさか、夫が・・・。事実は小説よりも奇なりと いうけれど、こんな現実ってあり?
後で 夫のスマホに電話して尋ねてみよう。
夫は言うかもしれない。「あっ、見つかっちゃった? その内に言おうと思っていたんだけど、投資で大儲けしちゃってね、これ一本で食べていく決心をして 仕事辞めたんだ。ずっと順調だから、君にも毎月お小遣いを100万円ずつくらいは あげられると思うよ」
う~む。ハイリスク・ハイリターンは、小心者揃いの我が家には 合いそうにないけどねぇ。それに、利益を得 続けようとすると、世界情勢・政治・経済に至るまで、ものすごい量の勉強が必要よね? 心身ともにストレスも半端なさそうよ。
でも、毎月100万円のお小遣いねぇ。捨てがたい魅力もある。悪くないかも・・・。う~む。
そんなことを考えていたら、窓口で自分の(順番待ちの)番号を呼ばれ、妄想は途切れた。こういうのを白昼夢というのかしら?
小遣い100万円はきっぱりと諦めて、私は 明日もコツコツと働くことだろう(たぶん)